20170613

#0014 つま先の向きと膝の向き


先日、あるクライアントさんに「トレーニングの際には、膝蓋骨と第2指は常に同じ向きになるように意識してみて下さい。」とメールでお伝えしたら、以下の様なご質問を頂きました。非常に重要なやり取りで皆さんにも役立つ内容でしたので、転記させて頂きます。

頂いた質問としては、膝蓋骨と第2指を常に同じ方向に向けておくためには、
①左右の第2指が平行になるように立ち、第2指の方向に膝蓋骨を曲げるのか?
②逆ハの字で立ったまま、第2指の方向と膝蓋骨の方向を一致させればいいのか?
ということでした。

男性の方からのご質問でしたので、通常多くの男性の方はつま先が外に向いて立っている(Toe-out状態)ことが多いと思います。

膝の障害予防という視点でみれば、「膝内部の捻転を抑制」出来れば良いので、両方とも正しいです。
つま先と膝蓋骨の向きさえ、常に一致していれば膝の障害リスクはかなり減らせます。

①と②の違いは、股関節がニュートラルにあるか(①)、外旋位にあるか(②)、です。

アルペンスキーやデモスキーの場合、基本スタンスはパラレルスタンスですので、足を常に平行にして滑ります。
ターンニングで内外旋動作は生じますが、基本は①の姿勢の方がスキーの特異性に一致します。

クロカンスキーヤーで、しかもスケーティングしかしないのであれば、②のパターンでも大丈夫です。
(細かく言えば、下りはスキーをパラレルスタンスにするので、クロカンスキーヤーであっても、普段の生活は①の方が望ましいでしょう)

スキーを滑るときやトレーニングをする時だけではなく、日常生活動作(階段の上り下り、イスからの立ち上がり、歩行など)でも意識する必要がありますね。


また、こちらのクライアントさんからは、もう1つ関連した質問を頂きました。

「スクワットをする際、膝蓋骨と膝の方向を一致させるためには、股関節を外旋させるような感覚でおこなわなければなりませんが、そのような感覚でいいのか?」

もう、これは大正解です!

大腿骨は股関節から真っ直ぐに膝に向かっているのではなく、股関節の付け根近くで「くの字」に曲がっています。
この構造的特性によって、生理的外反(X脚)状態になっているのが普通です。

角度はかなり個人差があります。

立っている時、仮につま先と膝が真っ直ぐ前を向いていても、しゃがみこむと、この大腿骨の傾きのために、膝は親指の方向に向かいます。
いわゆる「膝が内側に入る」状態ですね。

すると、内半月板と外半月板の圧力バランスが異なってきたり、内側側副靱帯へのストレスが増えてしまいます。

しゃがむ際には、少しずつ外旋動作を加えることで、常に膝とつま先を同じ向きにすることが出来ます。

膝を怪我される理由の一つに、股関節のモビリティ(可動性)低下があります。
股関節の可動性が低下すると、膝への負担が増してしまいます。


モビリティを高めるトレーニングをすることも重要ですが、普段の生活で股関節が使えていないと、当然トレーニングでも使うことが出来ません。

膝の向きとつま先(第2指)の向き、日常生活動作から意識してみてはいかがでしょうか?

20170306

#0013 スポーツメディスンフォーラムを聴講して

3月5日、東京都霞ヶ関イイノホールで開催された「第8回スポーツメディスンフォーラム」を聴講してきました。日体協公認スポーツドクター及び日体協公認アスレティックトレーナーの資格更新対象講習となっていて、各スポーツの日本代表チームなどのサポートに携わるDr.やATが現場でのサポート内容や課題などが伝えられました。

最初に登壇されたのは、今フォーラムの発起人でもあり、全日本スキー連盟のサポートをしていた時代に湯浅選手の怪我などで大変お世話になった、奥脇透先生。

先日札幌で開催されていた冬季アジア大会などの報告をされていました。個人的に気になったのは、選手の傷害発生率。

2016年のIOC国際オリンピック委員会の報告データによると、オリンピックなどの国際大会において、夏季競技と冬季競技での傷害発生件数に殆ど違いが無いそうです。  

しかし、日本の冬季スポーツにおける傷害発生件数は諸外国の2倍。さらに氷上競技では擦過傷などの外傷がメインで、前十字靭帯損傷などの手術が必要な傷害は殆どが雪上競技で起こっているとのこと。

海外でレースを転戦し、同じ競技をしているトップクラスの日本人選手が海外の選手達よりも怪我が多いというのは、やはり日本人選手のコンディション調整方法やオフシーズンのフィジカルトレーニングの取り組みに改善の余地が多々あるのか、と感じた。

リオ五輪で躍進した柔道ナショナルチーム、20年間競技中に肉離れを発生させていないスピードスケートナショナルチーム、様々な競技チームから今後のサポートのヒントを頂きました。

まず私が出来ることは、サポートしている選手やクライアントに、今回の聴講内容をフィードバックしていくこと。新しい課題を頂けるのは有難い限りです。


20170127

#0012 バランストレーニングを効果的に行うために知っておくべきこと


立位姿勢におけるスタンスとは「足と足の距離」のこと、支持基底面とは「足裏の面積を含む、2足間の面積」のことです。


スタンスが広がれば、比例して支持基底面も広がります。支持基底面が広がると重心移動出来る面積が広がり、「外乱(外からの力や衝撃や揺れなど)」への対応能力が高まります。


片足を1歩前に出して前後方向のスタンスを広げれば、縦長の支持基底面が生まれ、前後の外乱に強くなります。


片足を1歩横に出してスタンスを広げれば、横長の支持基底面が生まれ、左右の外乱に強くなります。


スキーを履いた状態でのプルークスタンスは、前方向からの外乱(重力)と横からの外乱(ターンの遠心力)に対して、カラダを安定させるために、物理的にも機能解剖的にも、とても理にかなったスタンスです。


外乱に対抗して、カラダを安定させる能力が「バランス能力」です。バランス能力を高めるトレーニングとして、ただ不安定な状況を作って耐えることをしても、効率的なトレーニングとは言えません。


バランス能力を高めるトレーニングをする際に、どんな方向の外乱をコントロールするトレーニングをしようとしているのか、その際のスタンスはどうすれば難易度が高くなるのか、把握した上でトレーニングすることで、自分に必要なバランス能力を高めるトレーニングが出来ます。


ちなみに、ラグビーの世界王者「オールブラックス」の選手達は、片脚立ちで様々な外乱を意識したトレーニングを行っています。片脚支持姿勢は、最も支持基底面が最小になった状態です。外乱に一番弱い状態で、相手のタックルや自らのサイドステップ・ストップ&ダッシュから生じる衝撃に耐えることを想定したバランスコントロールトレーニングをしています。


スキーヤーも滑走時に生じる外乱を想定して、バランストレーニングの際のスタンスを考えてトレーニングしてみてはいかがでしょうか?



20170123

#0011 アルペンスキー選手に有酸素能力は必要なのか?


時々サポートしている選手たちやクライアントさんから、「アルペンスキーって、レースで滑る時間は短いのだから、オフトレで有酸素能力高めるトレーニングは必要なのか?」と質問されます。

確かに、アルペンスキーの場合、レースで滑る時間は1分〜1分30秒くらい。長くても(遅くても)2分ちょっとの運動時間です。アルペンスキーという運動は長距離走の様なエアロビック運動ではなく、800m走〜1000m走の様なハイパワー〜ミドルパワー中心のエネルギー代謝をする運動と言えます。

これが、エネルギー代謝におけるアルペンスキーの競技特性です。ハイパワーやミドルパワーがアルペンスキーの競技特性であれば、「さほどエアロビックトレーニングをしなくても良いのでは?」と選手やクライアントさん達が考えるのも納得出来ます。

しかし、アルペンスキーヤーを本質的に強化していくことを考える場合、「競技特性に関連した能力」という視点だけではなく、下の3つの視点からも考えていく必要があります。

・競技特性を支えるための基本的な運動能力強化
・競技生活をする上で必要なコンディショニング
・競技特性を踏まえたリスクコントロール(障害予防)


□競技特性を支えるための基本的な運動能力強化
1-2分の運動時間ということは、エネルギー代謝としては有酸素ではなく、無酸素性の運動(非乳酸系&乳酸系)ということになります。しかし、無酸素性の運動といっても、エネルギー発揮により生成された乳酸を酸化還元して、再びエネルギーにリサイクルするためには、十分にカラダ全体に素早く酸素供給出来る能力が必要です。

□競技生活をする上で必要なコンディショニング
有酸素能力が高いと、「寒冷耐性」「暑熱耐性」が高く、季節の変化に順応しやすい。よって、オフシーズンおよびシーズン中、沢山練習をすることが出来ます。またスキー場は高所にあるため(国内で1000-2000m、海外だと4000m近くの高所にあるスキー場も)、生活するだけで安静時脈拍が高くなりやすい。高所環境下で十分な休息なく繰り返し練習すれば、疲労回復が間に合わず、十分なエネルギー供給が出来なくなります。

□競技特性を踏まえたリスクコントロール(障害予防)
同じ運動をした時に高い心拍数の人の方が、高い運動強度で運動していることになり、疲労度は高くなります。疲労した状態で滑れば、必然的に集中力低下・反応時間の低下に繋がり、怪我のリスクも高まります。

これらの3つの理由で、アルペンスキーヤーもしっかりエアロビックパワー向上のための、有酸素運動をする必要があります。

因みに、全日本スキー技術選手権で活躍している吉岡大輔選手は、高校時代のナショナルチームの体力測定をした際に、VO2max(最大酸素摂取量=有酸素能力の指標)は60mlを超えていました。この数値はマラソンランナー並の有酸素能力です。凄いですね。吉岡選手の活躍の秘密かもしれませんね。


20170122

#0010 クールダウンでストレッチをする際に注意すべきこと


クールダウンの目的は「運動で使った筋群の回復を促し、適切な状態にすること」です。

上半身の筋トレをすれば上半身の筋群が使われ、ランニングをすれば下半身の筋肉群と心肺機能が使われます。使われる部位やエネルギー代謝機能は運動によって異なるので、オフシーズンのクールダウンの内容はハイシーズンでは使えません。運動した部位や代謝機能を反映させたクールダウンが必要になります。

スキーシーズンでは、部位としては下半身と腰背部のケアが中心になるでしょう。そして、ミドルパワーの閾値の運動を繰り返すので、血液に酸素を送り込むために、軽めで持続的な有酸素運動(ジョギングやウォーキングなど)も必要です。

一般の社会人スキーヤーの方々が筋肉痛予防を目的として、広く行われているものにストレッチがあります。
2009年オーストラリアで行われた比較研究において、運動後、ストレッチをしたグループとしないグループでは「筋力、筋肉痛、クレアチンキナーゼの血中濃度に差はなかった」という結果が出ています。

筋肉痛予防目的で行うケアとしては、ストレッチよりは筋膜リリースやセルフマッサージの方が良い選択です。
但し、カラダのアライメント調整や可動域の改善、張力バランスの調整においては、ストレッチはとても有効なエクササイズの1つです。

その際に、1点注意すべき点は温度です。
ミシガン大学で行われたラットの足の筋肉を使った実験では、筋温度が低い状態でストレッチすると、軽くストレッチしただけで筋肉が損傷することがわかっています。
人間にも同じ危険性はあるので、ジョギング後や入浴後などカラダが暖まっている状態で行うのがお勧めです。